愛猫について書きたい。我が家には今年10歳になる猫の親子がいる。母猫のゾゾが生後半年の頃に産んだので、息子猫ヤマリとほぼ同い年ということになる。猫の10歳は人間の還暦に相当するらしい。ゾゾはその時の出産で三匹産み、うち二匹は縁のあった人々のうちに貰われていった。その後の消息によると、我が家にいた頃にワカタケと呼ばれていた雌猫はミミちゃんと名付けられたようだ。ヤマリと同じ茶トラの雄で、白ソックスの細面で、なんとなくお稚児さんっぽかったチョボは、今はどうしているのだろう。
ゾゾに初めて会った時の光景は忘れられない。当時住んでいた家の窓から、うちの玄関から通りへつながる10mほどの細道がよく見えた。子猫のゾゾは敷地に少し踏み込んだあたりで、こっちを見ていた。窓辺から見たその時のゾゾは銀色に光り輝いていた。誇張ではない。実際ゾゾは少し変わった毛色をしている。グレーを基調としたなかに、白やミルクティー色の縞模様や、腹巻きっぽい焦茶色など、なんとも言えない色と柄がまだらに配色されている。一体どんな遺伝子の絡み合いでこんな模様になったのだろう。我が家では「まだら」という言葉が相応しいと感じているが、一般的にはこういう猫も三毛と大別されるらしい。ともかく、当時から子猫ゾゾの柔らかな毛は銀色に光輝いていたのだ。
その数ヶ月か前に、知人経由で子猫を貰わないかという話が、夫にきていた。私はそれはダメだと即答した。入籍して2年経った頃だった。理性や計画性を傍に置けば、スルッと子どもが産まれる予感があった。そんななか、第三者の猫が家にやって来たならば、その可能性はなくなるだろうと踏んだ。
ならばその時子どもが欲しかったのかというと、そうでもなかった。ただ、生物として適齢であり二人にとっても適した時期だと感じるなかで、どっちへ転ぶか未決のままでいておきたかった。
それでも、結果的にゾゾが家にやってきた。
光り輝くゾゾと目が合ったその日から、彼女は我が家の勝手口あたりに棲むようになった。塀の下の暗くて狭い溝で暮らし、雨降る寒い日には風呂場の外壁に設置された湯沸かし器の上に座って暖をとっていた。たまによく見かけるキジ猫が、様子を見ていた。たぶん母猫だったんじゃないかと思っている。
それからゾゾは勝手口から家の中に入ってくるようになり、毎日ちょっとずつ距離を縮めてきた。ご飯を(ちくわとか魚とか)をあげていたからだ。しまいには台所の床にペタンと座ってくつろぐようにもなった。こうなったらもうお家に入ってもらおうということになり、迎え入れることに決めた。ダニがいないか心配だったので、風呂場に入れてシャンプーをしようとしたら、目をひん剥いて暴れ回って、風呂場の窓に激突し、わたしたちが呆気に取られている隙に、玄関から外へ逃げた。生命の危機を察知したらこうなるのかと恐れ入った。
こんな目に遭わせてしまったからには、金輪際、ゾゾはわたしたちの前に姿をあらわしてくれないだろうと、悲しい気持ちになっていたが、しばらくするとゾゾはまたお勝手口にふらりと顔を出した。
その後も、この10年の間にゾゾは逃走と帰還を3度繰り返している。