しっぽ結び - またの名を、島と尻尾

韓国人ミュージシャンLee Dongheeと共同制作

しっぽ結び - またの名を、島と尻尾 꼬리맺기부제 섬과 꼬리

この頃私は、日本に滞在していたLee Dongheeと度々即興セッションを重ねていた。彼はここ数年、アジア音楽のルーツをもとめて各国を旅していて、旅人の勘だろうか行く先々で不思議な巡り合わせを起こしていた。そんな彼から、次は京都の耳塚(コムドン)で毎年執り行われている供養祭に声をかけてもらったという知らせをもらう。

耳塚は、秀吉の朝鮮出兵で日本兵が殺めてもちかえった朝鮮人の耳や鼻の弔いとして建てられた塚で、豊国神社のそばにある。秀吉の威信を誇るためにつくられたともいわれている。ここでは毎年秋に慰霊祭が行われている。韓国からシャーマンや音楽・舞踊団がやってきて、鎮魂の舞や歌や音楽が奏でられる。そのような特別な場だった。儀式のあとは皆でここに眠る魂と共にキムチやオニギリを食べてお腹を満たす。普段は立ち入ることのできない耳塚には、韓国語が活気よく飛び交っていた。

私たちのパフォーマンスを見た韓国の太鼓の名手Yang Hyang Jin氏らが、韓国の芸能フェスティバルに私たちを招いてくれることになった。

式典で語られていた話から、私たちは、韓国の珍島にこの戦いで命を失った日本兵の亡骸を現地の村人が弔った墓があることを知り、ぜひとも行って見たいと思った。そのことを知ってなのだろうか、韓国側で整えてくれた旅程には、珍島に住むカヤグムの先生のお家で一泊させてもらうことになっていた。

私とDongheeは、この稀有な出会いからはじまる旅についての詩をしたため、これを種として自分たちのパフォーマンスを育てることにした。

しっぽ結びーまたの名を、島と尻尾 꼬리맺기ー부제 섬과 꼬리
 
大昔 わたしたちは しっぽをもっていた 옛날 우리는 꼬리가 있었다
しっぽで泳ぎ 歩き 把み 書いていた 꼬리로 헤엄치고 걷고 잡고 쓰고 있었다

心が 動きだして 마음이 움직이기 시작되어
体の彩が 赤に青にと 変わるとき 몸의 무늬가 빨강으로 파랑으로 바뀔 때
しっぽは もう 動いていた 꼬리는 벌써 움직이고 있었다
起立して 毛羽だって 旗めいて 波打って 일어서고 보풀이 일고 펄럭이고 물결치고
 
今 わたしたちは しっぽをもたない 이제 우리는 꼬리를 갖지 않는다
なくしてしまったのか 잃어버렸는지
見えないだけなのか 안 보일 뿐인지 
知らないだけなのか 모를 뿐인지
 
目を閉じる 눈을 감는다
そうろりと しっぽを動かす 살짝 꼬리를 흔든다
 
川猫はそのしっぽをそうろりと水面に垂らす 냇가 고양이는 꼬리를 살짝 수면에 늘어뜨린다
流れるしっぽはやがて海猿のしっぽと結ばれた 흐른 꼬리는 바다원숭이의 꼬리와 맺어진다
海猿のそのしっぽがふわりと宙に浮く 바다원숭이의 꼬리가 하늘에 둥실 뜬다
漂うしっぽはさまよって遠くに離れてゆく 떠다니는 꼬리는 헤매어 멀리 떨어져간다
しっぽのさきっぽに  靄 꼬리 끝의 안개
 
その湿り気の中で 그 습기 안에서 
 
(念佛 염불 )
尻尾先端細胞分裂 꼬리 끝에서 세포가 분열
百合大輪開花受粉 대륜의 백합이 피고 수분
把握手観音結薬指 관음과 악수, 약지를 잡다
触手不可視結尻尾 눈에 안 보이는 꼬리를 만지고 하나가 된다
 
目を開ける 눈을 뜬다
身震いする 몸을 떤다
  
Yuki FURUKAWA + Donghee LEE

日本人の古川友紀と韓国人のLee Donghee、そして、この異なる二人のあいだに漂う目に見えないものを想いながら。

京都公演では、その不可視の存在(もしくは三人目の共演者)をウッドベースに託した。そのフォルムから舟や島または人体を想起させると感じたからだ。韓国公演では、野外上演の祝祭感と規模を活かして、民俗芸能のような物語性と、どこかに存在するかもしれない親しみのある演目となった。舞台美術は、美術家 森本紀久子氏の強力をえて、彼女の作品「赤い道」を上演する地面に敷いた。

京都公演

photo: Yuta Odashima

2019年10月29日 at UrBANGUILD “FOuR Dancers vol.148にて”

作詩・演出・出演:古川友紀 Lee Donghee

美術:森本紀久子


韓国公演

2019年11月2日 at 霊光YeongGwang

作詩・演出・出演:古川友紀 Lee Donghee

美術:森本紀久子


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